沿革

「地中海」は、昭和28年5月、編集兼発行人・香川進、印刷人・山本友一で創刊された。「文化としての地中海」「明朗で明るく、同時に人間的な感情とつよい同化力」を持つ地中海のイメージがその基にはあった。思想には拘束されず、強いて言えば、「自由」を基本精神にしている。香川の前田夕暮系、塚崎進らの迢空系、山本の松村英一系など、多くの流れが「地中海」には注ぎ込んでいるが、常に現代短歌の源流への指向と飛躍が「地中海」の課題となっている。
 「地中海」の代表となった香川進を中心とした編集で、はじめ隔月刊であったが、昭和38年1月号から月刊となった。片山貞美を経て、昭和39年、編集は小関茂に移り、石本隆一・小野茂樹・岡野弘彦らが計画・実務に加わり、新鮮な風を吹き込む。組織もグループ制が導入され、活性化が図られたが、その後の変遷を経て、編集は椎名恒治→中川昭→椎名恒治と移り、現在は久我田鶴子が担っている。平成28年9月号で通巻700号となった。


~ 代表歌 ~

花もてる夏樹の上をああ「時」がじいんじいんと過ぎてゆくなり    香川進
秋分のおはぎを食へば悲しかりけりわが仏なべて満洲の土       山本友一
あの夏の数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ       小野茂樹